DX推進組織における人材確保の在り方

企業のデジタルトランスフォーメーションの推進において、デジタル人材の確保は極めて重要な課題の一つである。しかしながら、現在もっともトレンディーなチーフオフィサーであるCDO(Chief Digital Officer)が定着・活躍できていない現実もある。著者自身、大企業のデジタル組織の立ち上げと運営に関与してきた経験から、人材確保の戦略的なアプローチと外せないポイントを紹介する。

組織のDX化推進における人材確保の在り方

デジタルトランスフォーメーションの推進に必要な専門性を持つ人材の確保・育成の指針として、「デジタルスキル標準(DSS)」が経済産業省独立行政法人情報処理推進機構(IPA)から昨年末に初期リリースされている。

このDSSでは以下の5つの人材類型が定義されている。
1.ビジネスアーキテクト
2.デザイナー
3.データサイエンティスト
4.ソフトウェアエンジニア
5.サイバーセキュリティ

本稿では中でも以下の定義付けがなされる『ビジネスアーキテクト』という役割に着目し、その重要性を探る。

ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した 推進を通じて、目的を実現する人材

この役割には、ビジネスアーキテクトのほかにも、事業やサービスの立ち上げに主体的に携わるビジネスプロデューサーやプロダクトマネジャーなど多くの呼称がある。共通項として、彼らは組織に溶け込み、人脈をつくり、デジタルとビジネスをつなぎ合わせ、前に進めることが強く求められる。そして、総じてそのような人材を外部登用に頼ることが難しい、というのが著者の主張である。

この主張を補完する客観的な事実として、スイスのビジネススクールIMD(International Institute for Management Development)のCDO(Chief Digital Officer)の実態調査レポート
を手繰ろう。本レポートによれば、大企業の21%がCDOを設置しているが、華やかに着任したCDOの平均在任期間はたったの31か月(約2年半)である。これはいわゆるCXOの中で最も短く、さらにその4分の3以上は就任後すぐに退職しているという。余談ではあるが、成果に関わらずトレンディーな肩書を持ち、有能でやる気のある高度人材である彼らが職にあぶれることはない。

以上を踏まえると、デジタル人材の中軸を担う人材は内部育成が明確な肝となる。ただし、その中軸人材を支え、また将来を見据えると、何をアウトソーシングし、どこまで手の内化(内製化)を目指すのか――。その解に至るまでの論点は多岐に渡る。

組織のDX化推進における人材確保の在り方②

以下に「デジタル組織の立ち上げ」および「デジタル人材戦略策定」の手順を改めて俯瞰する。

▲クリックで図を拡大

上記を推進する際は、それぞれ1つずつ進める方法もあるが、実際には同時平行的に進めたり、また定期的に見直しが入ったりすることが一般的である。その中でも外せないポイントについて、実例を踏まえ以下に解説する。

① 「デジタル戦略」と「人材類型」の連動

とある企業のデジタル化推進組織において、DOLBIXのご支援を通じて、求める人材像の類型化を改めて行ったところ、組織が求める人材要件と、新事業創発の推進リーダーが自身の参謀に求める人材要件とに不整合が生じていた(結果、組織が作成したキャリア採用の求人要件もリーダーの求める要件との間にズレがあった)。その背景として、組織の戦略目標のアップデートが追い付かず、また組織内でボタンのかけ違いがあったことから、何を目指す組織であるのかの再整理も行った。
これらは急拡大する組織ではよくあることだが、定期的な目線合わせは基本動作の一つと言えよう。

② 足元の「フェーズ」に合わせて「優先スキル」の解像度を上げる

現在のフェーズが、「社内にデータ活用の風土を根付かせる(事例化が最優先)」状況であれば、デジタル人材には成果創出を推進するマネジメントスキルが優先される。そうした人材を中心に、データ利活用のユースケースを整理し、事業部門を巻き込み、デジタル化推進の実行体制を組成するなどの施策が講じられるのである。
高度な解析技術を有しているだけでは、パイロットプロジェクトは一向に立ち上がらない。一言で「データサイエンティスト」と整理し、採用・アサイン・育成を行うとスキルミスマッチの問題が生じてしまうので留意したい。

③ デジタル人材の「市場の学習機会」や「モチベーションの源泉」に触れる

デジタル人材の経済的な評価や待遇は高騰の一途である。弊社が事業を開始した2021年1月から見ても、様変わりしている、と言っても過言ではない。
ただし、単に報酬水準を同業他社に合わせれば良いというのは誤りである。ビジョン、最新の取り組み(成長機会、先進性、具体案件における役割)、組織文化や風土(個人の裁量具合、能力主義と年功序列のバランス)をリアルに伝え、共感が得られなければお互い不幸になる。
今のデジタル化推進組織の人材確保において、自社が求める人材を惹きつけられる要素、足りない要素を今一度整理してはどうだろうか?

弊社は、これまで大企業におけるデジタル化推進組織の戦略策定からデジタル人材確保に係る様々な施策(獲得・育成・リテンション・評価)の落とし込みと伴走支援を行ってきた。これらの経験を活かし、デジタル人材の活躍の場が広がり、企業、ひいては社会全体のデジタルトランスフォーメーションに貢献することを願ってやまない。

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著者

マネージングディレクター 
ビジネス&テクノロジー戦略
コンサルティング本部

藤田 晋​

日系大手コンサルティングファームにて、財務会計・経営管理を中核に多岐に渡る業界に対して、業務改革・標準化、ERP導入・展開などのコンサルティングサービスに従事。当社参画後は既存事業とデジタルの融合を追求し、新たな事業戦略を創り出すと同時に、導入から定着まで一貫した支援を提供。成果共創にこだわり、顧客の課題に向かい合うことを信念としている。